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2019/09/21

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 不幸などというものは自分でそう認めてしまった瞬間に現実になる。
 だからここに辿りついたことを、不幸の一言で片づけるのはやめようと心に決めていた。
 なんだかんだと理由をつけたところで所詮、自分で選んだ道なのだ。これ以上悪くなりようがない場所に身を置きたかった。十八でやむを得ず家を離れてから、凛那は半ば捨て鉢に生きてきた。
 山手線の東京と渋谷を直線で結んだ真ん中に位置する六本木。
 さらにその中央にある六本木交差点は、「六本木通り」と「外苑東通り」が交わり、観光客を含め一日中雑多な人間で賑わう。日が沈めば不夜城と化す。
 その大きな交差点から二筋ほど入った、やや静まった場所に、会員制高級ホストクラブ『紳粧館』はあった。
 洒落たビルが立ち並ぶ歓楽街の中でも、またとない気品を帯びた瀟洒な建物だ。
 もっとも、豪華な黒壁に包まれた内側で繰り広げられている商売は「気品」という言葉には程遠く、その実態は相当にいかがわしい。
 凛那がここで身を売るようになって、この四月で二年になる。
 男たちの荒々しい欲望で蹂躙されるセックスにも慣れて、本気で快楽を貪る術を身につけた。
「う……あ――あっ、英さ、…――」
 そして今夜も、淡いライトの下で男に組み敷かれ、嬌態を晒す自分がいる。
 鼻にかかった喘ぎが漏れ、請うような視線で相手を見上げた。
 男は凛那の足首を高々と持ち上げて自分の肩に乗せる。それから力を誇示するように最奥までズンと突いた。
 開かれていた腿がむりやり閉じられ、鋭い感覚が身体を突き抜ける。この体位は相手のペニスが勢いよく入り、深々と奥を抉られるのがつらかった。
 時宜を得たように、男の腰がさらに大きく振れる。
 めくるめく衝撃に凛那は首をのけぞらせた。顕わになった小さな喉仏が、喘ぎに震える。
 視界を邪魔に感じ、目を閉じる。そうやってつらさよりも快楽の方に意識を集中した。
「くっ……ふっ。…んう―――」
 根元から括れまでを使った容赦ない抽送が繰り返されると、たまらなく淫らな気分になる。
 男根でめいっぱいに開かれた孔はすっかり熟れて、蕩けきっていた。
 陰茎全体で擦られ続けている媚肉は灼熱を帯び、もっと味わわんとして貪欲に彼を締め付ける。
「…んあっ、…んあっ、…」
 半開きになった口元から、本能のまま喘ぎが漏れる。
 波となって押し寄せる悦楽はもはや下肢だけにとどまらず、怒張したものに強く突き上げられるたびに、背中から脳天へと突き抜けていく。先ほど手と口で射精させられた己自身も、再び猛り始めていた。
「そんなに気持ちいいの、凛那? もっと俺が欲しかったら、いやらしく言って」
 男の嬲る声が、ねっとりと鼓膜を犯す。
 英(はなぶさ)は本来穏やかで紳士的だが、セックスではややサディスティックな一面を見せる。その心理をくすぐってやると喜ぶのは分かっていた。
 プロとして客のこれくらいの嗜好はわきまえておかねばならない。そして凛那自身も、行為の中でいたぶられるのは嫌いではなかった。あえて嫌嫌と首を振る。
「んんっ、そんな、」
「どうした? 恥ずかしいの?」
「――ん。」
 恥じらいがちに頷くと、カリ首まで引いたところで男の動きが止まった。
 ピストンを受けていた腔洞が突然充たすものを失って、侘しさにひくつく。
「ぁひっ。…んっ、…んぅっ――」
 欲しい欲しい、というふうに腰を振る。


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